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産地への帰還と伝統技術の継承~産地復活へ向けた窯元の取り組み~

2025.04.04

事業者名:大堀相馬焼 陶吉郎窯 九代目 近藤 学 氏事業内容:伝統工芸品「大堀相馬焼」の制作所在地:福島県双葉郡浪江町大字大堀字後畑98-1https://www.toukichirougama.com/?page_id=8

事業者概要

近藤家陶業の始祖である初代近藤平吉氏(1736~1818年)が、京焼楽焼を修行し江戸で楽焼師として創業。二代目近藤陶吉郎氏(1789~1857年)が文政二年(1819年)相馬藩に大堀瀬戸方として召し抱えられて以降、創業以来日用粗陶器を作っていた大堀相馬焼は製品の改良と多様化がはかられ、多くの優秀な陶工も養成されており、近藤陶吉郎氏は大堀相馬焼中興の功労者といえます。九代目である近藤学氏は、大学を卒業後、家業である陶吉郎窯に従事。第52回日本現代工芸美術展にてNHK会長賞、改組新第7回日本美術展覧会(以下「日展」)及び第11回日展にて特選を受賞するなど数多くの賞を受賞。現代工芸美術家協会理事、現代工芸美術家協会東北会会長を務めています。福島第一原子力発電所事故の後はいわき市に避難し仮拠点にて作陶を再開。浪江町大堀地区の避難指示解除後、大堀相馬焼の産地復活のために工房と店舗を再築し、令和6年6月30日から大堀地区での活動を再開しています。現在(令和7年4月1日時点)、大堀地区にて活動する唯一の窯元となっています。令和6年11月には福島県クリエイター育成インターンシップ事業を活用し、伝統工芸品への関心が高い学生等を対象にした3日間のインターンシップを実施しています。また、令和7年4月からは新たに2名の職人を採用予定するなど、伝統継承に向けて精力的に活動しています。

作業風景(近藤氏)
登り窯(いわき市の拠点に設置)

浪江町大堀の店舗では、青ひびに走り駒が描かれている伝統的なデザイン、保温性に優れた二重焼き(写真上段)だけでなく、かつての伝統技法「大堀筒書き」(スポイト状の道具に泥漿を入れ絞りながら模様を描く技法)を日本画家の協力を得て現代に蘇らせた作品(写真中段)、大堀相馬焼の器に会津漆器の漆作家が絵付けしたコラボ作品(写真下段)なども販売しています。

当事業の利用について

<避難先での事業再開時>原子力発電所事故によって浪江町から避難。平成23年6月に避難先のいわき市の仮拠点にて創作活動を再開するにあたり、材料の仕入れ費用等の運転資金の確保や、窯を含めてすべての設備を新たに購入する必要があったことから、当貸付事業(A資金)の申し込みに至りました。<浪江町での事業再開時>伝統産業においてその「土地」は非常に重要で、伝統的工芸品は他の地域を見ても生産地の地名が冠されており、産地と伝統的工芸品は一体のものとして扱われています。避難指示が解除された「発祥の地」で先陣を切って作陶を行い、本来の姿で焼物を作ることが地場産業の再興と発展に寄与し、伝統の継承につながる取り組みであると考え、浪江町大堀地区に帰還して創作活動を再開することを決意。浪江町大堀地区での事業再開、継続的な活動を行うにあたって長期に資金が必要となるため、当貸付事業(B資金)の申し込みに至りました。

原子力災害に伴う「特定地域中小企業特別資金」制度について

当事業は、原子力発電所事故の被災区域に事業所を有する中小企業等の事業継続・再開に向けた長期・無利子の融資制度で、以下のとおり、被災事業者の状況に応じて3つの区分を設けています。① 県内の移転先において事業を継続・再開する事業者に対して、事業資金(運転資金・設備資金)を融資する(A資金)。② 解除された区域等において事業を継続・再開する事業者に対して、必要な事業資金(運転資金・設備資金)を融資する(B資金)。③ 福島県原子力災害被災事業者事業再開等支援補助金の交付を受けて、県内、県外において事業の再開を行う事業者に対して、施設設備資金、新規投資や販路開拓等に要する資金を融資する(C資金)。※今回掲載の事例のように、過去にA資金を利用した事業者も要件を満たしていればB資金、C資金を利用することが可能です。

事業者の声

この資金がなかったら避難先でのいわき市での事業再開や産地である大堀地区に戻って事業再開することはできませんでした。グループ補助金や事業再開等支援補助金の採択も受けていましたが、建築資材が高騰しており自己負担分が多額となっていたこと、補助対象経費以外にも事業再開のために必要となるものは多々あったことから、この資金で手当していただき、大いに役立ちました。大堀地区に戻ったのはあくまで手段であり、目的は大堀相馬焼という伝統を継承していくことにあります。伝統工芸品はその土地を離れてしまっては伝統として継続してくのは難しいと思います。また、1軒だけでは伝統を続けていくのは難しいため、この大堀の地で大堀相馬焼の伝統を受け継ぐ職人を育成していきたいと考えています。

問い合わせ先

企業振興部 原発災害対策特別融資チームTEL:024-525-4019FAX:024-525-4079

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